市販のちりめんじゃこは通常、甲殻類アレルギーに配慮して
混獲されるエビ・カニ類はある程度除去されます。フグなどの混入を防ぐため
カタクチイワシ以外の魚も可能な限り除去されて販売されているもの
が多いです。東上は、幼少の頃釜揚げしらすの中に
イカや他魚が入っていないか夢中になって探していましたが、
なかなか見つからなかったわけです。
そんな、しらすの中に混じったアイツらを探すのが
お好きな方にお勧めしたいのが、「無選別のちりめんじゃこ」です。
私がこれを知るきっかけとなったのが、大学時代の学芸員実習で、
きしわだ自然資料館がイベントで使用した例が紹介され、
学芸員実習の授業でも実際に取り扱ったことがあるからです。
タツノオトシゴを見つけ喜んでいたら、いつの間にか無くなっていて
気づいたらdragon氏がとぼけた顔でこちらを見ていました。
タツノオトシゴは彼の腹の中に収まったようです。
さて、無選別ちりめんじゃこの入手方法ですが、年間を通して
安定的に供給を行っている和歌山のカネ上というしらす屋さんを
お勧めします。価格は1袋200gで847円(税込)です。
https://www.kanejo.com/tirimon/tirimon.html
教育機関でも活用例が多く、大口の注文でも電話で受け付けてくれます。
理科の授業の中で、チリメンモンスターの分類というテーマで
実践を行ってみました。今回は学年末のお楽しみ的な使い方ですので、
学習指導要領に対応した授業ではありませんが、もしも教科書の内容に
則って授業をするのであれば、中1の理科の脊椎動物と無脊椎動物の
違いで活用可能かと思われます。指導案は別のサイトをご覧ください。
チリメンモンスターの授業は、中学生でも十分楽しんで行えます。
生物を発見したり分類したりする楽しさを学ぶことができますし、
今は、一人一台貸与されたPCをつかって調べながら学べるので便利です。
さっそく、授業で生徒が分類(種類分け)した生物を見てみましょう。
タイ科の一種
Sparidae sp.
まずひときわ目立つ大きさの稚魚がこちらです。私は最初メバルか何かかと
思ったのですが、ある生徒が模様と形態からイシダイっぽいと言ったので
そちらのほうが分類上近かったというオチです。
特定はできませんが、クロダイやマダイの稚魚ではないかと予想します。
エソの一種
Synodontidae sp.
その見た目の紛らわしさから、釜揚げシラスの混在魚として圧倒的シェアを
誇るのがエソです。特徴は背側の5つないし6つの斑点です。
よく見ると、釜揚げシラスにめっちゃ入っています。
アジの一種
Caranginae sp.
ぜいごというかたい鱗が尾鰭にかけて存在するのがアジ亜科の特徴ですね。
写真にはアジ以外の魚も混在していると思います。稚魚というだけで難しい
ので、乾燥してしまっていると余計に同定が難しくなります。
タチウオ
Trichiurus lepturus
かね上のチリメンモンスターの中に入っているカタクチイワシ以外の魚で
結構な割合を占めているのがタチウオです。細長く、大きい個体も多いので
目立ちやすく生徒も見つけやすいです。
タチウオは大きくてスルメみたいなので、生徒が口に入れないように
注意してくださいね。ちなみに味は上質です(試食済み)
※食品用グレードではないので食べないでください
カワハギ属の一種
Stephanolepis sp.
このサイズだと普通のカワハギなのか、それともアミメハギなのか区別が
つきませんが、カワハギ属の一種であることはわかります。
おそらく写真上の個体は普通のカワハギ
Stephanolepis cirrhiferと思われます。
フグ科の一種 Tetraodontidae sp.
フグの特徴は鋭い歯をもつことです。稚魚でもわかりやすい歯がある
のがわかります。フグはこの1個体しか見つかりませんでした。
一般的には稚魚に毒はないはずですが、シラスに混ざるとクレームもの
になるので、シラス業界から恐れられている?存在でしょうか。
ホウボウ科の一種? Triglidae sp.
ホウボウである自信はありませんが頭部の骨格からそのように判断しました。
特徴的な胸鰭はわかりづらいですが、胸鰭の鰭条っぽいものが残っている
ので多分ホウボウでしょう。
ベラ? Labridae sp.
チリモン図鑑には、細長くて色のついた魚はベラかハゼといった
感じだったので、多分ベラということで…
スズメダイ? Pomacentridae sp.
体長が短く、赤みを帯びているのが特徴かと思います。写真は他種の魚も
混ざっています。小さいので見つかった数は少ないですが、個体数は多めです。
不明魚
形態的にカレイの一種にも見えるが、特定できず…
カサゴ属の一種 Sebastiscus sp.
たたまれていてわかりにくいですが背鰭の棘から判断しました。
底生魚であることは間違いなさそうです。
カタクチイワシ Engraulis japonicus
御本家のちりめんじゃこです。全体の半分程度を占めますが、
混獲物が多すぎて少なく感じるほどです。
ヨウジウオ属の一種 Syngnathus sp.
ヨウジウオはやたらと細長いので、タチウオとも見分けがつきます。
細長い口が特徴です。このヨウジウオの種類まではわかりませんが、
どれも縞模様が入っているので同じ種類ではないかと思います。
タツノオトシゴ属の一種 Hippocampus sp.
チリメンモンスター界のアイドル、タツノオトシゴです。独特のフォルムから
すぐに見つけることができます。何なら開封前の袋の外から見つけました。
確率的には1袋に1匹ぐらいはいます。
ウナギ目のレプトケファルス幼生 Leptocephalus
何のレプトケファルスかはわかりませんが、
タチウオとは違いもっと縮れている印象です。
生徒は最初は魚だと思わずゴミだと思っていましたが、
目がついているのを見て生き物だと納得していました。
ヒラメ? Paralichthys olivaceus
ヒラメではないものもいるかもしれませんが、薄っぺらいのに
背骨が透けて見えるのでヒラメかカレイのどちらかだと思います。
カニのゾエア幼生
角みたいな部分がすぐに折れてしまうので取扱注意です。
もう少し成長したメガロパ幼生より数が少なめでした。
カニのメガロパ幼生
ゾエアが成長した姿、だいぶ大人の姿に近づいています。ちゃんと脚が10本
あるのが特徴です。数えきれないほどいました。
カニダマシ(右)
左はカニの仲間です。カニダマシは名前の通り偽物のカニなので、ヤドカリ
のなかまです。したがって足の本数は8本であることが特徴です。
シャコのアリマ幼生
オキアミににていますが、大きな目が特徴でカマキリのような見た目です。
尻尾をみるとシャコっぽいなと感じます。
ソコシラエビ Leptochela gracilis
エビの中でも目立ち、数が多いのがソコシラエビです。小型のエビで
食用としてあまり認知されていません。写真をみるとソコシラエビだけを
あつめたご飯にかけるふりかけのようです。
オキアミのなかま
ソコシラエビよりもサイズ感が小さく、赤く小さな甲殻類はサビキ釣りで使う
アミエビと同じ仲間だと思います。
釜揚げシラスの腹が赤いのは彼らを食べているからです。
ウオノエのなかま
釣った魚の口の中にいるアイツらです。
まさかちりめんじゃこのなかにいるとは!と詳しい生徒が驚いていました。
イカのなかま
もっとも探しやすいチリモンです。胴部が長い場合はイカと思われます。
タコのなかま
イカよりも数が少なく見つけにくいです。胴部がイカに比べると小さいです。
カメガイのなかま
今回初めて発見しました。浮遊性の貝類で、クリオネもその一種です。
今回使用したのは2.4kgの無選別ちりめんです。
120人の生徒で1時間探して得られた結果です。こうやって並べると
コレクション感が出て楽しくなります。生徒たちも満足していました。
今回は授業での実践でしたが、小さいお子さんから大人のマニアな方まで
楽しめますし、季節によって混獲されるチリモンは異なってきます。
カジキやイトヒキアジ、コバンザメなどのレア物探しも楽しみの一つです。
皆様もチリメンモンスター探しに挑戦してみてください。
http://laytrack.blog.shinobi.jp/%E6%97%A5%E5%B8%B8/%E3%83%81%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%92%E4%BD%BF%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%8E%88%E6%A5%AD%E5%AE%9F%E8%B7%B5チリメンモンスターを使った授業実践